磨き抜かれた外国為替証拠金取引
総合資産管理で先駆者になったM・Rのような証券会社がインターネットを通じるオンライン・サービスを行うことになり、AOLやYといったポータル・サイトが金融総合サイトを形成し、総合資産管理サイトを運営している。
これらは、従来の金融業という特別の分野の崩壊であり、ネット上にその機能が吸収していくことになる。
さらに、インターネットによる金融に新しい業務を生むことになる。
先に述べたe−コマースに必要なものは取引相手の特定化であり、その基本は「電子認証」であったが、これは金融機関に認証機能という業務を付け加えることとなる。
従来からの審査能力を生かして認証機能を確立するために「アイデントラスト」が日米欧の金融機関の共同出資で生まれたが、世界共通ルールとしての認証制度の確立をめざしている。
そして、この機関は認証局として認証情報を流すルートを確立することを目的としている。
金融機関業務のインターネット中心への転換。
ただ、日本の場合、意外に遅れているのが金融機関そのものの情報化である。
日本の各金融機関はいち早くコンピュータ化による事務の合理化を図ってきた。
コンピュータメーカーにとって最大のお得意さんでもあった。
間接金融の業務の性質からして特に預金者に対する正確でスピーディな事務処理を果たすシステムの構築は特に重要なものであった。
そのためにオンラインシステムとして膨大な投資を行ってきた。
ところが、多くの銀行が通信情報処理の分野で進めてきたのはコンピューター・センターを「事務センター」として機能させたにすぎない。
すなわち、一般に日本企業の情報化と同様、日本の銀行はアメリカに比べ大きく遅れてしまった。
オンラインの事務処理によるテラー業務など窓口での一般事務における省力化の努力はあったが、経営そのものの情報化には努力が払われてこなかった。
すなわち、情報システムの概念に本質的な問題があり、経営システムに情報処理と意思決定の両者を組み込んでおらず、経営システムそのものに前時代的な対応がある。
オンラインはあくまで「事務の合理化」であり、「経営の革新」の手段ではなかった。
もともと企業間関係を重視するネットワーク型の間接金融中心であったことは、市場中心の金融とは違い、先に述べたようなリスク管理や金融サービスは必ずしも重要でなかった。
このことは銀行だけでなく、日本の企業全般にいえることであるが、ITの導入は経営改革のみならず、そのコンセプト自体の転換を意味している。
現在でも多くの銀行の情報システムは依然として「メインフレーム・勘定系」を中心に情報システムが構築されており、事務合理化によるマンパワーを代替する道具としての範囲を出ていない。
ALMなどの分野にも活用されはじめているが、それはまた業務の機械化でしかなかった。
銀行業務全体が金融の市場化に対応して、統合情報システムとして再設計されねばならない。
そして、インターネットのもつ開放性を活用するものにならねばならない。
ある会議で金融機関の頭取が金融機関はIT化に最も先進的に取り組んできたことを自慢していた。
しかし、それはコンピュータ化であってネットワーク化と概念が異なる点を指摘しても、まったく理解してもらえない。
これまでの銀行はネットワークを利用してアウトソーシングしたり、ネットワーク上で直接取引を行うという発想をもっていない。
確実で誤りのない業務をめざした金融機関業は情報システムを外から守るためにシステムを可能な限り閉鎖的にすることに慣れてきた。
オンラインシステムを銀行間で結びつけるような形でのオープン化を行ってきたものの、それはあくまで相互接続であって、世界のネットと結びつけてさまざまな金融サービスを提供したり、世界の機関を利用して金融的利益を上げるという考えではなかった。
これまでのデータベースには顧客の取引に関する豊富な原始情報が穀物のように詰まっている。
この形から「サイロ」と俗称されている。
しかし、情報は適時適切に引き出され、現場で活用できる仕組みになっていなければ意味がない。
顧客の決済を通じるさまざまな情報を金融機関の経営上に生かすようなシステムが設計されなければならないのである。
そこでシステムをメインフレーム中心型からイントラネットとして機動力に富むクライアント/サーバー型のシステムに転換して、各現場で必要となるデータを短時間で収集し、加工・供給できる体制が重要となる。
そして、これが経営戦略と整合的に使われなければならない。
そのためにはCIO(ChiefInformationOfficer)は金融機関の情報システムを設計することにその責任があるが、同時にシステムの統一』性と経営戦略との整合性にも責任をもたねばならない。
しかし、日本の場合、あくまで事務センター長である。
ITへの対応を進めるためには、CIOが経営の中心的役割を果たすように経営システムを革新すべきこととなる。
この意味で、日本の場合この機能を担う担当役員や経営のトップが、IT革命の意味をほとんど理解せずにきたことが、日本におけるIT化の遅れの最大原因であった。
CIOに企業改革を行わせることがIT革命の推進の基本であり、金融機関の改革もこれに従う必要がある。
他方では、商品・営業を熟知するエンジニアやシステムアーキテクチャの充実が必要となる。
メーカーにおいても目に見える商品の競争力は最終的な生産性のみで測られるわけではなく、それを生み出す一連のプロセスに関する総合力で決まる。
まして目に見えない商品やサービスで勝負する金融業にあっては前線と後方機能の最適ミックスを図るために、「システムイン・プロダクトイン」の発想をもたなければならない。
すなわち、システム部門と営業部門がお互いの事務情報、経営情報を相互に取り入れることが重要となる。
ITが金融ビッグバン以降の金融機関経営全体にわたった改革の柱として活用されねばならない。
ネットビジネスの拡大以上見てきたように、インターネットを中心としたITの発達は単なる通信技術上の変化だけでなく、経済システムそのものに大きな変革をもたらしている。
それはIT関連産業における経済的な性質がこれまで経済学が基本的にモデルとしてきた製造業の性質とまったく異なったものであることから生じてきた。
従来の経済学にITという新しい分野を付け加えることで、経済学はより幅の広いものに展開していくことになる。
そして、日本型経営システムを中心とした日本経済の仕組みはITと相似的な関係にあり、アメリカ経済においては補完的な関係であったものが、むしろ日本では代替的な関係にある点が問題であった。
これがIT導入を遅らせてきたが、日本経済自身がこのIT化によって大きく変わっていかざるをえない状況にあり、IT経済学の研究はそのまま、日本経済の改革論につながっていく。
IT革命が産業革命に匹敵するような新しい経済への転換であることから、経済学においてもその理論的な関心は非常に大きなものとなる。
しかし、現実の変化が激しいのは資本主義経済であるから当然のことである。
むしろ、資本主義経済であるはずの日本経済においてIT革命が遅いのも、非資本主義経済の要素があまりにも多いからであろう。
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